前回取り上げたのは好きになれなかった本についてだったけど、今回取り上げるのはものすごく好きになった本について。
「それは "The Little Match Girl" と呼ばれ、美しい装丁が施され、本屋で販売されました。お話自体はとってもスウィートで悲しくて、人々の涙をそそり、あっという間に世界中で有名になりました。おかげで著者の男性はものすごくお金持ちになったけど、私は彼が人生の中で本当にマッチ売りの少女と遭遇したとは思わない。だってもしそうだったら、私たちがブロンドの巻き毛(アンデルセン "The Little Match Girl" のマッチ売りの少女はブロンドの巻き毛)なんて、そんな可愛いモンじゃないってことも、四六時中お腹を空かしてうんざりしてるってことも知っていたはず。もし彼が私たちのひとりにでも、わざわざ時間をさいて話しかけるようなことがあったなら、マッチ売りの少女たちにだって名前があるってこと(アンデルセン "The Little Match Girl" には名前がない)も知っていたんじゃないから。そう、私が Bridie Sweeney 。世界的に有名なお話の中のようなマッチ売りの少女だけど、私版のお話は、あっち版のお話より断然いいエンディングよ」
上記は冒頭部分で気になったところをかいつまんで私流に日本語にしたもの。
この本、一応アンデルセン「マッチ売りの少女」のリワークということですけど、出だしからアンデルセンに対する挑戦状とも取れる啖呵の切りようで(だけど言われてみればその通りのことばかり)、のっけから引きつけられます。
She's got a lot to say for A MATCH GIRL.
Bridie版のお話は1887年大晦日に始まります。
この本はリワークであるとともに、ビクトリア時代(1837年~1901年)ロンドンの、マッチ工場における過酷労働の実態をベースにしています。
低賃金、長時間労働、不当解雇、そして私は今回初めて知った white phosphorus(英語はもちろんのこと母国語の日本語でさえ、こういうケミカルな単語に無知で、日本語だと白リンというので正しいでしょうか、、、間違っていたらすみません)、つけ木にこれをディップしてマッチ棒となる(燃えるようになる)わけですけど、強い毒性があり、工場で働く女性たちに多大な健康被害を与え続けたそうです。
そんな中、Bridie に先導され工場で働く女性たち(Bridie のお母さんもその中のひとり)は遂に立ち上がり行動に出ます。
そしてその姿に心を動かされた世の中の人々がそれぞれのできるかたちで彼女たちを応援して、すぐにとはいかなかったけれど少しずつ未来に光がさし始めます。
私はこの本の存在をたまたま観た動画で知って、この表紙の女の子のことをどうしても無視できず購入しました。
そのときは、こちらをグッと睨みつける女の子という印象でしたが、読み終えて改めて眺めてみると、女の子(Bridie )の表情は勝ち気ながらもどこかやわらかさがあり、その瞳は先の世界を見据えてるように感じられます。
そう、この本お話はもちろんのこと、Lauren Child の挿絵がとにかく素晴らしいんですね。
Bridie is a feminist icon, with a story that is all too relevant. There is so much power in these beautiful pages.
Katya Balen がこの本のことをこんなふうに賛美していて、Emma Carroll の文章とLauren Child のイラスト、美しくてパワフルで私もまったく同感です。
It wasn't just about a little box of wooden spills: I was selling them comfort, possibilities, hope.
'Mine are magical matches,' I'd insist. 'One strike and you'll be in a better place, I guarantee it!'
勝ち気で心優しいリアルマッチ売りの少女 Bridie のセールストーク。
私もこれからあかりを灯す時は、唱えたいと思います。
’One strike and I'll be in a better place!!!’
"The Little Match Girl STRIKES BACK" by Emma Carroll / Lauren Child (ILT)
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