前回の記事は日常英会話の参考書としてSally Rooneyの"Normal People"を取り上げました。
そしてそれを書いていた時、ふと思い出したのがこの本。
そういえばこれも日常英会話の参考書だったと。
著者のアリス・オズマンはイギリスの作家、イラストレーター、脚本家。
数々のベストセラー作品を生み出しており、中には青春BLコミック"HEARTSTOPPER"もあります。
この本の主人公は大学に進学したばかりのGeorgia。
心優しい性格の持ち主で、個人的にはもしこういう子がクラスにいたら友達になりたかったと思いました。
そんなかわいい女の子でも実は悩みがあって、それは今まで誰にも恋愛感情を抱いたことがないということ。
大学の寮のルームメイトRooneyは夜遊びに出掛ければ、あっという間に男の子を見つけ、いちゃついてるというのに。。。
そんな彼女を見て、Georgiaは思う。
How.
How could she do in one single hour what I was unable to force myself to do in my whole teenage life?
でもこれって恋愛以外のこと、勉強とかスポーツとか他のことでもありません?
自分は全10代かけて頑張ってきたのに全然ダメで、なのにあの子はいとも簡単にこなしちゃってということ。
正直に言うとこの本、なにか引っかかるものがありながらも、超自分好みというほどの作品ではなかったので記事にしてなかったんだけど、今回ふと思い出し改めて考えてみたら、好みじゃないから読む価値がないかと言えばそんなことはなく、いやむしろ充分あると思い、こうして書いてます。
まずこの本の中には耳慣れないセクシャリティ用語がいろいろ出てくるんですけど、そういうセクシャリティの存在を知らず、どうして自分はこうなんだと悩んでいる方々には救いになるかもしれないし、受け入れる側も理解を深めるチャンスになると思います。
特に焦点があてられているのはAsexualとAromanticというセクシャリティ。
・ Asexual(アセクシャル):他者に対して恋愛感情も性的感情も抱かないセクシャリティ。
・ Aromantic(アロマンティック):他者に対して恋愛感情を抱くことはないが性的感情は抱くこともあるセクシャリティ。
たぶん私は、このAsexualとAromanticという言葉を文学の中で初めて見たんじゃないかと思います。
著者のアリス・オズマン自身、この作品はかなりの挑戦だったようで、Acknowledgementsにはこんなふうに記しています。
This book was the most difficult, frustrating, terrifying and liberating thing I've ever made.
Georgiaは何度も躓きながら自分探しの旅をする。
時に自分を傷つけ、時に親友のことも傷つけてしまう。
彼女は誰に対しても恋愛感情を抱くことができないけれど、だからと言って”She loves none”ではないはず。
だって愛のかたちは恋愛だけじゃないと思う。
この本、何が本当の幸せなのか、セクシャリティというデリケートな題材を通して、私たちにうったえかけているように思います。
大切なのは・・・
Knowing who you are (Identity) and Loving yourself (Self-acceptance).
だから・・・
Don't do anything you're not comfortable with.
Please.
PS 日常英会話の参考書と言っておきながらその辺について書いてませんでした。
この本にも知っていれば日常会話で役立ちそうな表現がたくさん詰まっていると思います。
またYA(ヤングアダルト)ノベルですので、難しい言い回しもなく身近な英語という印象です。
たとえば身なりについての描写がちょいちょい出てくるんですけど・・・
She was wearing a velvet red jumpsuit ー a deep V at the front and flared legs ー with heeled boots and huge hooped earrings. She'd piled half her hair up in a messy bun on top of her head, the rest flowing down her back.
これはRooneyが夜遊びに出掛ける時の様子なんですけど、まるで赤いジャンプスーツにでっかいフープイヤリングを身につけた彼女が目の前にいるような、リアル感溢れる描写だと思います。
そして「散らかっている」とか「乱雑な」とか「汚い」などを意味する"messy"は、無造作にクシャッとまとめたおだんごヘアにも使えるのですね。
私の英語力なんてホント大したことないですけど、そういうことが分かってくると、英語が身近に感じられ面白みが増すような気がします。
■ "Loveless"
■ "HEARTSTOPPER"
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