年代、場所、不明。
主人公は美術館で清掃員として働くライター志望の女性。
日々、もっと執筆に集中できる生活を送りたいと願う彼女は、裕福な男性と結婚することにより、念願の環境を手に入れる。
というのは、かなりざっくりしたあらすじ。
そこからまず私が興味を抱いたのは、この本、一体なにをもって”Indelicacy”なのか。
私はタイトルが持つ意味に好奇心をくすぐられ、読んでみることにしました。
この”Indelicacy”という small quiet book、個人的にはとても好きな1冊でした。
Amina Cainはアメリカの作家ですが、とてもヨーロッパ的な雰囲気をもつ本です。
レビューなどを読むとstrangeとかweirdとかいう単語がよく使われているように感じるんだけど、不思議と私はこの本からstrangeとかweirdとかいう印象は受けなかったです。
読み始めてすぐ、最初の数行を読んだだけで、この本絶対好きだと確信させられて、読んでる間はずっとこの本の中にいるような、会話をしているような、興奮しているようで客観的で。
好きなタイプの本と出会った時というのは案外冷静に「ついに来たな」と態勢を整え、ひとり静かにページをめくる快感を味わう。
この本は、まだ半年以上あるけど、2023年に読んだ中でもっとも気に入った本(2023年出版の本ではないですが)。
主人公は結婚により金銭的な心配から解放されたわけだけど、もちろんそれが最終的な幸せというわけではない。
お金持ってるダンナ、友達、メイド、階級、日々綴られる文章(書くということに対する主人公の姿勢には惹かれるものがあった)、彼女は新しい生活の中で本当に欲しいものが何なのか気づいていくんだけど、その過程での心の動き、思考回路には、読者を引き込む力がある、と私は思いました。
読むそばから頭の中でその状況が思い描かれ、映画になったら面白いと思うのだが。
現実世界で他人が考えていること、本心を知るのは、まず不可能だけど、小説の中では、登場人物が何を考えているか知ることができます。
私の場合、本を面白いと思うのは、他人の心の中を覗き見られるところにあったりもします。
ちなみにこの本、157ページと短いうえ単語も文章もシンプルなので、読みやすいです。
なんとなく、アンナ・カヴァンとか好きなかた、多分この本も気に入るんじゃないかなあ。。。
似ている、ということではないんだけど、独特のライティングスタイルから独特の世界観が確立されているという点に於いて、通じるものがあるような気がします。
私はこの本を読みながら、ふっと頭に浮かんだのがアンナ・カヴァン「氷」でした。
で、そんなわけで私は、とにかくこの”Indelicacy”という本をたいそう気に入り、そこから”Delicacy”というタイトルの新しいブログを始めてしまいました。
ほんとは”Indelicacy”と、そのまんまでいきたかったのですが、やはりそれもどうかと思い、反対の”Delicacy”にした次第です。
今のところ、日常生活の中で撮った写真を、あれこれ考えず気ままにアップしていくだけのブログ(文章もない)で、かなり中途半端な感じですけど、時の流れとともに変化していけたらいいなと思ってます。
私はスナップ写真を撮るのが好きで、ここを始めた理由もただ撮ってるだけじゃつまらないからなんですけど、そのわりにどうもここでは写真を上手く使えないんだなあ。。。
なにはともあれ、いつもこちら「変幻自在」をご覧いただき、ありがとうございます。
スポンサーサイト