先月2月は葛藤の多い月でした。
限りある時間の中で読書はもちろんのこと、他にもやりたいこと・やらねばならないことが多々あるというのにオリンピックから目が離せず、キリがないから今日は見ないと決めても結局また見入ってしまうという繰り返しでした。
でもそれだけ選手の皆様が素晴らしかったということだし、もうこれには何か抗えないものがあると諦めました。
そんなわけで2月は葛藤の中での読書だったわけですけど、実はこれが、手に取ったすべての本に心を動かされ、オリンピックに負けないくらい素晴らしい読書月間となりました。
今回取り上げるのはその中でも特に心を鷲掴みにされたこちらの1冊。

本書、BBC Young Writers' Award 2020を受賞したLottie Millsのデビュー作。
10話からなる短編集なのですけど、すべての物語が本当に本当に本当に、素晴らしかったです。
以下は裏表紙より。
The characters in these unforgettable stories are born into a society that cannot accept their deifference. Labelled 'grotesque', 'deviant' or 'dameged', they have a choice : contort themselves in a bid to fit in, or find another way to live.
And so a father and daughter take refuge on an isolated beach : a young woman opts to receive a perfect, pain-free body : a little girl agree to join the circus. Eventually, however, the outside world begins to intrude on their imagined safe hevens. They must flee once more.
続けて私流意訳。
収録された物語はどれも忘れ難く、また登場するどの人物も彼らが持つ違いを受け入れてもらえない社会に生まれる。彼らはグロテスクとか異常とか破損とかいうラベルを貼られ、どちらかを選ぶことになる。適合するために彼ら自身を歪めるか、別の生き方を見つけるか。
なので、父と娘は隔離された海辺に避難をし、若い女性はペイン・フリーな、理想的な身体を受けることとし、幼い少女はサーカスの一員となることに同意する。しかしやがて外界が、彼らの思い描く安全な避難先へと侵入し始める。彼らはまたしても避難しなくてはならなくなる。
上記にあるように本書は、異なる存在であるということについて、またそれを取りまく社会について、ものの見方について、本当の優しさについて、愛について、尊厳について、、、と、挙げだしたらキリがないくらい非常にたくさんのことを考えさせられる作品です。
物語は薄気味悪かったり残酷だったりする(なので、もしかしたら読者を選ぶ作品かもしれない)のですけど、私はこの作品からかなりの衝撃を受けました。
どのお話にも脳裏に焼き付く力強さがあり、そしてまた息をのむ美しさがあると思いました。
この著者の眼を通した世界はイマジネーションの泉であり、読み始めてすぐ、自分がとてつもなく素晴らしい本を手にしてしまったことを確信し、一語一語、それはこの著者の頭の中を表す言葉なのですけど、ゆっくりと噛みしめながら読みました。
私の中に取り込められた言葉はイメージとなって脳内で鮮明に再現され、著者の頭の中が私の頭の中を埋め尽くします。
本を読んでいるときというのは自分の心をとても近くに感じるのですけど、ものすごく好きだと思える本と出会ったときというのはこれがさらに強まり、自分という存在が心だけになってしまいます。
静寂の中、感動というショックで激しく震える自分の鼓動を感じながら物語に没頭する時間はまさに快感です。
この本に関しては、どんなに言葉を並べてもその素晴らしさを語りつくせていないもどかしさを感じます。
しかも本書、彼女のほんのデビュー作。
次回作がただただ待ち遠しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後ともどうぞご贔屓に。
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