変幻自在ブックス

At Midnight, I Become a Monster

画家フランシス・ベーコンという、どうしようもない混沌

こちら全74頁の、小さな小さなマスターピース。

 

"The Death of Francis Bacon" by Max Porter

 

アイルランド生まれでイギリス人の画家フランシス・ベーコンの最後の6日間をイギリス人の作家マックス・ポーターがリイマジン・リクリエイトした作品。

1992年4月、ベーコンは医師の助言に背き元恋人を追ってスペイン・マドリッドを訪れ、そこで帰らぬ人となった。

言葉もろくにできない異国で心臓発作を起こし、カトリック病院に救急搬送され、修道女に付き添われ、でもそこに元恋人の姿はなく、たった一人静かに息を引き取った。

ピカソと並び20世紀最も重要な画家の1人とされながら、それまでのフェイムがまるで幻であったかのように、その最期はとても孤独なものだった。

マドリッドで一体なにが起きたのか。

そんな謎に包まれた失われた6日間の画家の頭の中を、この画家に長く執着心を抱いていたというポーターが再現する。

いってみればポーター流新証言になるわけだが、それを彼は本書の中でこんな風に記している。

 

It's an attempt to express my feeling about a painter I have had a long unfasionable fixation with.

It's an attempt to get art history out of the way and let the paintings speak.

It's an attempt to hold catastrophe still so you can get a proper sniff at it.

 

以下、私流意訳。

それは画家に対して長く固執し続ける時代遅れの感情を表現する企てである。

それは美術史をどかして絵画に話しをさせる企てである。

それはカタストロフィを静止する企てである。

そうすれば誰もがそのにおいをしっかりかげるようになる。 

 

私はフランシス・ベーコンが好きで、それでこの本を手に取ったのですが、実を言うと読み始めは、何だかよくわかりませんでした。

私の語学力なんて大したことないので、もちろんそのせいもあるんですけど、しかしそれにしてもわかりにくかった。

本書の中でポーターは使用する言葉を物凄く厳選していて、それはまるで詩のようであり、だけど時に選ばれた言葉だけでは断片的過ぎて、最初はちょっと戸惑いを覚えました。

あ、これは、あのことを言ってるのだろうなとか、この喩え好きだなとか、読み進める中で一応思考は反応するのですが、わかりにくいせいか伝わりにくく、なかなかダイレクトに響いてきませんでした。

それでもフランシス・ベーコンのことが好きなので、この本あまり面白くないなと思いつつ読み進めていったら、いきなり雷にうたれたわけです。

全7チャプターの6チャプターまでいって突如思考回路が180度動き、違う、この本すごいんだ、これでいいんだと。

息絶え絶えのベーコンをあらわすかのように、紙の上で切れ切れに並ぶ言葉を目にした途端、そうだ、臨終の人の頭の中が理路整然としているわけないし、しかもフランシス・ベーコンだし、このとき彼を取り巻く環境の言語は母語の英語ではなく外国語のスペイン語でカタコトだし、わかりやすいわけがない、断片的でいいのだと。

以前新聞か何かの書評で、この作品のことを"messy poem"と言い表している方がいたんですけど、いやまさにその通り。

フランシス・ベーコンというカオスがうみ出したカオス(絵画)が発する言葉、混沌としていて当然なのだった。

不思議なことに、それに気づいてからは突然この本がわかりにくい本じゃなくなり、言葉がしみ込んでくるようになって、思い込みや先入観などからくる拒絶がいかに理解力の妨げとなり、物事の価値を歪めてしまうか、受け入れるって大切ですね。

 

こういう作品を読むと、つい自分の最期についても考えてしまい、私の場合、あの世とこの世の狭間でとんでもないことを口走ることは目に見えていて、それを思うと今からかなり恥ずかしい。

が、しかし、現時点において自分がどんな最期をむかえるのかなんてわからないわけで、、、今考えることではないと。

 

本書は非常に独創性に富んだ作品であり、またこの内容は著者の創造にすぎないはずなのに、読んでるとホントにこうだったような気持にもさせられました。

 

力強い作品だと思います。

 

P.S. このmessy poemを読みながら、ずっと頭の中でリンクしていたのはあのベーコンのmessy studioでした。

 

イギリス・ロンドンにあったフランシス・ベーコンのスタジオの写真集、"7 REECE MEWS FRANCIS BACON'S STUDIO"

 

フランシス・ベーコンという、どうしようもない混沌。

 

 

スポンサーサイト

 

 

にほんブログ村 本ブログ 洋書へ
にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村


人気ブログランキング