宇多田ヒカルさんは『花束を君に』の中で唄いました。
花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に
私がどれほど君のことを好きになったか
どんなに言葉を並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 白いレースのリボンを
君というこの本に

こちら、著者Tomasz Jedrowskiのデビュー作品。
Tomasz Jedrowskiはポーランド人である両親のもと西ドイツで生まれ、今はフランス在住とのことなんですが、そういえば私、ポーランドの方によるポーランド作品を読んだことないので、今回が初めての読書経験ということになります。
作品はLGBTQを題材とする中で若者たちのインティマシー、成長を描き、そしてそこに政治的背景が絡むことでストーリーに緊張感が増していき、個人的にはそれがこの本をさらに面白いものにしてると感じました。
舞台は1989年に崩壊したポーランド人民共和国、共産主義国家の時代。
物資は不足し、食べるために庶民は、来る日も来る日も長い長い列に加わらなければならなかった。
Waiting for nothing, queuing for a possibility, that's what we're all doing now
以下は机流意訳。
何も手に入れられず、もしかしたらありうるかもしれない小さな可能性のために並ぶ、今私たちがしてるのはそんなこと。
この本を読んだのがちょうど参議院選挙期間で、自分の一票の行き先を本気で悩んでいるときだった(ギリギリまで悩みましたが、やっと決断しました。これ書き終わったら投票所へむかいます)ので、この政治的背景を含んだ展開は余計に興味をそそりました。
そしてさらに、何故に思わずリボンをかけたくなるほど良いと思ったかと言えば、とにかく詩的で美しい表現の数々があちこちに散りばめられていて、それらはまるで歌の歌詞のようであり、言葉が翼を広げ空へと飛び立っていくような衝撃があった。
BUCK∞TICKは『形而上 流星』の中で唄いました。
胸を裂く 破裂する きっと死ぬほど美しい
砕け散る 消えてゆく もっと強く強く抱きしめて
胸を裂く 破裂する きっと死ぬほど美しい
夢を見た 夢を見た・・
この本を読んでいるとき、何故か頭の中でずっとこの曲が流れていて、なんだろう、この物語も切なくて哀しくて胸を裂くような美しさがあって、私の中で共鳴しあっていたのかなと思う。
初めて誰かを深く愛するという経験をした主人公の心の動きが、ドキドキするほど一途なのですよ。
I think of you. The face that my memory can conjure up with its rough outlines and fine details, with the grey-blue eyes the same colour as the Baltic Sea in winter. I think of your face while I get up, while I move in the darkness from bed to window, clothes lying around the floor like unfinished thoughts.
以下、机流和訳。
きみを想う。
ぼくの記憶が描きだすきみの顔。
ラフな輪郭と細かいディテール、グレイ・ブルーの瞳は冬のバルト海と同じ色。
目覚めて暗闇の中ベッドから窓際へと向かう間、きみの顔を想い描く。
床に散らばる洋服は、未解決のまま取り残された想いのよう。
I sat in the hallway and tried not to think of you and me. I tried not to think of us, under the covers in your bed. I tried not to think of your arms or your hands or your eyes. I tried not to think of all the things I had imagined we'd do together - return to our lake next summer, move in together someday. I tried not to think of Hania, and your fingers on her sequinned dress. I tried not to think of Maksio or his eyes when he saw us in the forest. I tried not to think of Granny, or Professor Mielewicz.
君のことは想う(I think of you)けど、君と僕のことは想わないようにした(tried not to think of you and me)という僕。
嗚呼。
Life is harsh.
P.S. "CALL ME BY YOUR NAME"が好きな方、きっとこの本好きだと思います。
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