変幻自在ブックス

At Midnight, I Become a Monster

この夏再読したい洋書と和書

猛暑お見舞い申し上げます。

皆様ご無事、でしょうか。

 

来る日も来る日も狂気を感じるほどの暑さで、とにかく早くこの夏が過ぎ去ってほしいと願う反面、冷房のきいた室内で静かに耽るこの時期の読書はかなり好きという矛盾。

特に私の場合この季節は、昔読んで良かった本とか本棚に長いこと眠ったままの未読本とか、無性に自分の本棚を振り返りたくなります。

ずっと読み返したいと思っているのに読み返せてない本とか、ずっと頭の片隅にあるのに何年も手付かずの本とか、自分の中の気掛かり本を、ぜんぶは無理でもせめてその一部と、今度こそ決着のようなものをつけたくなるのが、夏、の読書。

 

とそんなわけであちこちかき回し、この夏再読したい本の山とこの夏こそ読みたい未読本の山を築いたので、とりあえず再読したい本の山について、ちょっと雑談。

雑談ですので、内容的に「どうでもいいこと」と「私事」が多く含まれ、しかもそういうときにかぎっていつもより長い記事になってしまいました。

 

この夏再読したい本たち

それでは山の上から一気にまいります。


① ”Nineteen Eighty-Four” by George Orwell

初めて読んだのは文庫で10代の頃、衝撃でした。

以来、ディストピア作品といえばまずこの作品が頭に浮かび、他のディストピア作品を読んでいるときでさえ本作のことを考えながら他作品を読んでます。

また私にとっては、この本がディストピア作品への扉を開いてくれたという意味でも忘れられない1冊です。

この原書を読んだのは数年前のこと。

最近本書に関するレビューを読み、そしたらまた再読したくなりました。

 

WAR IS PEACE

FREEDOM IS SLAVERY

IGNORANCE IS STRENGTH.

 

それはそうと私この本、全く同じものを2冊持ってるんですよね。

オンラインショップで購入したとき、どうやらカートに2度入れてしまったようです。

ネットでのお買い物、気をつけないと。

 

表紙はフランシス・ベーコンのセルフポートレート

 

② "Find Me" by Andre Aciman

③ "Call Me by Your Name" by Andre Aciman

②の"Find Me"は③の"Call Me by Your Name"の続編で、以前こちらでも取り上げた作品。

 

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"Find Me"を読み終えた後、ストーリー展開に若干の違和感があったものの、Acimanのリッチでゴージャスな文章にすっかり魅了され、私は読まなくていいやと思っていた"Call Me by Your Name"を結局読み、またさらに最近、この著者のエッセイ集を読んだら、これがまた文句なく良く(一応そのエッセイ集についてはここで改めて書きたいと思っている)、文章に圧倒されるとはこういうことだと感じています。

そのエッセイ集はまるでAcimanの頭の中を覗き込むような内容で、それを読んで強く感じたのが、そっちを先に読んでからこの2冊、特に"Find Me"を読めば、もっと楽しめたのになということ。

"Find Me"の読み始めに覚えたストーリー展開に対する違和感も、それを読むとなるほどそういう意図があったのかと驚かされ、もう一度読み直したいという気持ちにさせられました。

物事の判断に好みを優先すると、己の無知さを思い知らされることが度々ありますね。

 

④ ”84 Charing Cross Road” by Helene Hanff

こちらも以前、江藤淳さんの名訳による日本語版『チャリングクロス街84番地』をここで記事にして、ほんとはそのとき続けて原書の方も取り上げるつもりだったんだけど、これを読んだのもかなり前のことだし、どうせなら再読してからなんて考えていたら、全然読み返さないので未だ記事になっていない。

この本を取り上げたいなと思ったのは、”84 Charing Cross Road”の後に収録されてる続編"The Duchess of Bloomsbury Street"が負けず劣らずよいので、そちらに焦点をあてて少し書きたかった。

それは遂にヘレーン・ハンフが念願の英国を訪れた時のこと。

そしてその中で特に印象に残っている件があって、彼女が滞在中なにかとお世話になり密かに想いを寄せた英国紳士へ、いよいよ帰国日が迫ってきたときに感謝の気持ちとしてハロッズのお花屋さんで選んだバラの花束を贈るんですけど、そのバラの花に心惹かれた理由がほんと良くて、以来なにか贈り物を選ぶときは必ず彼女のハロッズのバラのことを思い出すようになりました。

私もそういう贈り物の選び方をしたいと思わせてくれたエピソードでありました。

 

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⑤ ”What I Talk About When I Talk About Running” by Haruki Murakami

これ、頻繁に、

あれ?”What I Talk About When I Talk About Running”だっけ?

いや、”When I Talk About Running What I Talk About ”だっけ?

となる、村上春樹さんの回顧録。

この本を読んだとき、これが村上さんの作品の中(読んだことあるものは限られているが)で一番好きだと感じたのに、だいぶ内容が飛んでしまっていて、こちらもずっと読み返したいと思っていました。

しかし今ふっと思ったんですけど、村上さんのどちらかというと違和感を覚えた作品、そっちの内容は結構鮮明に覚えてるんですよね。

何だかそれ考えると、本当にこっちが良かったのか、それとも本当はそっちが良かったのか、よく分からなくなってくる。

 

とはいえ、こちらはさっそく読み始めてます

 

⑥ "Naked Lunch" by William S. Burroughs

これは若かりし頃、今はなき池袋リブロでかなりの期待を込め日本語版を購入したものの不完全燃焼だった作品なんですけど、何かずっと引っかかっている作品のひとつ。

昔読んでそれほど良いと思わなかった作品を大人になって読み返してみると、その素晴らしさにおののくことが多々ありますが、これもきっとその類なんじゃないだろうかと。

とうのも、バロウズとアレン・ギンズバーグ(詩人)による往復書簡集"The Yage Letters"を読んだら、バロウズの文章、凄みがあってめちゃくちゃかっこいいのですね。

はたから見たら常軌を逸しているようで、だけど物事を見つめる眼差しはぞっとするほど冷静で、その本読んだらバロウズに対する興味がかなり高まり、今度こそ(何度も読む読む言って読んでない)再読したいという気持ちになってます。

 

⑦ "The Handmaid's Tale" by Margaret Atwood

①の”Nineteen Eighty-Four”同様、読者のメンタルや感情を激しく揺さぶる1985年発表のディストピア作品で2019年に続編"The Testaments"が発売されている。

前回記事にした"I Who Have Never Known Men"を読んだとき、同様に監視下に置かれた女性の物語であるこちらを思い出しました。

 

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今この時代に読み返し何を思うか、自分の気持ちを確認したい。

 

とても印象的なカバーデザイン

 

⑧『いやな感じ』高見順

この本を中野ブロードウェイのなかの古書店で購入した当時、私は高見順という作家のこともこの本のことも知らなかったけど、表紙左下に小さく施されたピストルのエンボス加工があまりにかっこよくて、これは絶対欲しいと食いついた。

この装丁、一体どなたの手によるものなのでしょう。

書籍にカバーデザインに関する表記はなく、もしかしたらどうしても見当たらない函に記してあったのでしょうか。

本作は想像以上に面白くて、しかも意に反し読みやすくて、たぶん手こずるだろうという予想は外れて、思いのほかあっと言う間に読み終えてしまったことは覚えているんだけど、肝心の内容がぼんやりしてしまっていて、思い出すことと言えば確か主人公、梅毒うつされるんじゃなかったっけ?とか、どうでもいいことばかり。

 

⑨『犬身』松浦理恵子

『親指のP修業時代』がとても面白かったので、紀伊國屋書店新宿本店で平積みされてるこの本を見かけたときは、そっこう手が伸びました。

 

こういうわたしにセクシャリティというものがあるとしたら、それはホモセクシャルでもヘテロセクシャルでもない、これは今自分でつくったことばだけど、ドッグセクシャルとでも言うべきなんじゃないかと思う。好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえれば、天国にいるような心地になるっていうセクシャリティね。

 

私に「あの人の犬になりたい」という願望はないけど、「そして、人間では辿り着くことのできない心の深みに飛び込んで行きたい」という関係性には興味を持つ。

18年ぶり(なんと!!!光陰矢の如し)に是非とも読み返したい1冊。

 

⑩『菊地成孔の粋な夜電波』菊地成孔&TBSラジオ

こちら、2011年〜2018年まで放送された人気ラジオ番組『菊地成孔の粋な夜電波』を書籍化したもの、全4巻。

 

ラジオでの饒舌がそのまま本になる。なんて凄い男だ。 ー 筒井康隆

 

なんて豊かな夜中だっただろう!なんて甘美な音楽とトークだっただろう! ー 吉本ばなな

 

ともにまったく同感なコメント。

菊地さんのおしゃべりと選曲はシャレててほんと面白かったなあ。

ラジオ番組が終了してしまったのにもガッカリさせられたけど、こういう続きものは次回が楽しみな反面、終わりが近づく寂しさがつきまとい、複雑な心境で次の発売日を待ちわびました。

ずっと続くなんてことはありえないと、十分承知しているんですけどねえ。。。

こんな面白い本、たった1回読んだだけなんて勿体ないので、この夏は是非とも真夏の粋な夜電波としたい。

そして菊地さんは音楽の方も、近く第2期スパンクハッピー関係の2枚組CDが発売されるそう(ファンと言いつつ情報通ではないので間違っていたらゴメンナサイ)なので、そちらも楽しみにおります。

 

で、音楽といえば私の事を少し書くと、私は本をあれこれ読むのも好きだけど、音楽をあれこれ聴くのも好きで、菊地さんは文章も好きだし音楽も好き。

あとBUCK∞TICKファンでもあり、ちょうどスブロサツアーの追加に行ってきたとこ。

かっこよかったなあと今まさに目がハート。

何かでも単なる偶然なんですけど、第2期スパンクハッピーも(第2期)BUCK∞TICKも、ボーカリスト(ヴォーカリスト?どちらが正しいか分からない)を失っているのですよね。。。

しかもただのボーカリストではなく、理想のボーカリストを。

ともに言ってみれば第2期同士。

 

⑪『私は生まれなおしている 日記とノート 1947-1963』スーザン・ソンタグ(著) デイヴィッド・リーフ(編) 木幡和枝(訳)

作家、人権運動家、スーザン・ソンタグの14歳から30歳までの日記。

彼女の日記が出版されると知ったときは狂喜したのに、いざ読み始めたら何故か入り込めず、最初の1冊で断念。

訳はソンタグ作品を多く手がけた木幡さんだし、絶対好きになると思っていたのにそうならなかった本ゆえ、ずっと気になっている。

ずいぶん長い間、再読することも先(続きがある)に進むこともなかったわけだけど、忘れていたわけではない。

私はソンタグが好きだから、ソンタグの日記、ソンタグの血と肉と骨と毒薬を好きになりたい。

編者で息子のデイヴィッド・リーフによると、母・ソンタグの自作に対する注意の払い方は半端なく、著作が翻訳されるとなると、自分には通じる程度の能力しかない外国語への翻訳でも、みずから必死になって改良しようとしたそう。

これ読み返したら、続きは原書で読もうかな。

 

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